少女を犯したい。
純粋無垢な少女に対して、淫らな性行為を行いたい。
そんな欲望が、俺にはあった。
だが、世間は、この社会は、決してそれを許しはしない。
そのような行為をしたことが発覚すれば、それ相応の制裁を受ける。
その制裁を覚悟の上で事に及ぶほど、俺はイカれてはいない。
そんな間抜けな犯罪者にはなりたくない。
しかし、欲望は決してなくならない。
満たされない欲求は、いつまでも俺の胸の中でくすぶり続ける。
深く…どす黒く…。
そしていつか、その欲望の火は、俺の中にある理性やモラル、常識、正義感といったものを
徐々に焼き尽くしていく…。
……ばれなければいいのだ。
どんな犯罪も、発覚しなければ犯罪ではない。
誰にもばれないように、すればいい。
ではどうやって?
誘拐? 
ありえない。
暗がりで襲う?
ナンセンスだ。
薬か何かで眠らせる?
悪くはないが、やはりリスクは大きい。
いつのまにか、そんな問答を俺は本気で考えるようになっていた。
どうすれば、誰にもばれないように少女に対して性行為に及べるのか…
俺がたどり着いた答え、それは
「催眠術」
テレビで見るような、記憶や意識を好きなように操れる催眠術を
実際に自分で使えるのなら、いとも簡単に目的を達成できるだろう。

それから俺は、独学で催眠術を学んでいった。
誰かの元で学ぶのが一番なのだろうが、俺が催眠術を学んでいるということはなるべく誰にも知られないほうがいい。
実際に事に及んだ後、万が一露見し催眠術による犯罪の可能性が示唆された場合
少しでも俺に捜査の手が及ぶのを回避するためだ。
だが、独学での修行は想像以上に難航した。
催眠術は魔法ではない。科学的に確証された立派な技術だ。
だからこそ、誰でも努力さえすれば、ある程度は使えるようになる。
しかし、ネットや書物をはじめ、さまざまな資料を読み漁り、ある程度の知識を手に入れることはできても
実際に催眠術をかけるべき練習相手がいないのだ。
催眠術を学んでいることを秘密にしている以上、誰にも頼めない。
そうでなくとも、素人の催眠術の実験台になどされたくはないだろうが…。

それでも、友人や知人をなんとかごまかしながら実験相手にし、催眠中の真似事のような事はできるようになった。
だが…、俺が望むような催眠術には遠く及ばなかった。
そもそも催眠術は、相手を自分の意のままに操り何でもいう事をきかせられるような便利なものではなかった。
まずはじめに、相手を催眠術にかけるには非常に長い工程が必要だ。
テレビや何かで見せているのは実際の工程の最後の一部分でしかない。
指を鳴らして、すぐに催眠にかかるような、そんなうまい話はない。
所詮はテレビの演出だ。
ショーとしてはそれでもいいかもしれないが、俺の目的にはまったく適さない。
道端で延々と少女に向かって催眠術をかける手順をい踏んでいれば、それだけで通報されるだろう。
だがまあこれは、状況設定さえうまくいけば何とかなるかもしれない。
もっとも問題なのが、催眠術は基本的に相手の嫌がる事はさせられないという事だ。
催眠状態とは、いうなれば起きたばかりで寝ぼけている状態に近い。
判断力や思考力が低下し、だからこそ術をかけた相手の言う事を素直に聞くのだ。
だが、いくら寝ぼけているといっても自殺をしろといわれて自殺をするような人間はいない。
それと同じように、相手が絶対的に拒否をするようなことは催眠術では強制できない。
間接的に、動くなといって包丁で刺そうとしてもやはり術は解けてしまう。
自殺や殺害は極端だとしても、性行為の強要なども不可能に近い。
肉体的、精神的苦痛を与えようとすれば、拒否されるか、術は解けてしまうのだ。
この二つの問題が、俺の目的の前に高く立ち塞がる。

解決策は実践するのはともかくとしていたってシンプルだ。
素早く、そして深く催眠術をかければいい。
一瞬にして、それこそすれ違いざまにでも催眠術をかけられるのなら、
ほぼ誰にも怪しまれる事なく、少女をかどわかす事ができるだろう。
さらに、非常に深い催眠状態に陥れる事ができれば、
性的知識の乏しい少女であれば、性行為の強要も可能だろう。
要は本人が苦痛と感じなければ、苦痛があることと知らなければ催眠術でどうとでもなるのだ。
多少の痛みも寝ぼけているときに感覚が鈍いのと同じように、ある程度はごまかす事はできる。
まあ、そのさじ加減は難しいだろうが。
どちらにしろ、催眠術の真似事ぐらいしかできない俺では
いや、おそらくほとんどの催眠術師は、この問題を解決できないだろう…。

だが、この問題はある日唐突に解決した。
偶然手にしたある一つの機械。
「催眠術器」とでも呼ぶべきそれは、特殊な光をある一定のリズムで明滅させるという一見陳腐なライトにしか見えない物だった。
しかし、その一定のリズムとは人間の脳波と同じリズムをしており、
この機械の光を見せながらかけた催眠術は、信じられないほど素早く、驚くべきほどにその効果を高めるのだ。
もちろん、催眠術の知識がないものにとっては単なるガラクタに過ぎない。
だが、催眠術師にとってはまさに至高の道具。
俺は、海外の胡散臭い医療器具メーカーでひっそりと販売していたそれを購入した。
もともとはどこかの国の諜報機関が開発したものを、催眠治療用の医療器具として再開発されたなどという話を聞いたが、そんな事はどうでもいい。
今はただ、これを手に入れた幸運を喜び、
そして、目前にまで迫った少女の肢体に、俺は、思いを馳せるのだった…。


▽本編へ▽


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